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ヨーロッパ歴史学の新潮流

, ゲオルク G.イッガース

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原著1975年、増補版1984年で、邦訳は1986年です。同じ著者による、対象を20世紀に絞り、1995年までの内容が増補された『20世紀の歴史学』が出ていますので、研究者以外では、もう本書を読む価値はあまりないと思われます。しかし、私にとっては読む価値がありました。なぜならば、1970年代後半から1980年代中盤くらいに西洋史学を専攻した学生の多くが史学概論の講義で学んだであろう内容が記載されているからです。非常になつかしく、当時の講義内容を回顧しながら読みました。以下目次です。はしがき第一章伝統的歴史学の危機(1)第二章フランスにおける『アナル』の伝統-総合的人間科学としての歴史ー(55)第三章歴史主義から「歴史社会科学」へーフィッシャー論争以後における西ドイツの歴史叙述(107)第四章マルクス主義と近代社会史(187)第五章最近のアメリカ社会史の傾向-接近の限界ー(257)附章エピローグー過去十年を振り返ってー(305)あとがき(349)訳者あとがき(357)第一章は、54頁のうちの8割方19世紀ドイツの史学史(残り2割が同時代のフランス)です。この本の特徴は、方法論と研究体制に絞っているところです(物語風人物伝はまったくない)。全体では、ドイツ史学史140頁、フランス50頁、米国45頁、英国25頁くらいの配分です(エピローグでも各国を扱っているが、ページ数割り当てのカウントが難しいので除外)。ポーランドを中心とする一部東欧も少し扱われています。この点でほぼ「ヨーロッパ歴史学」の題名通りです。フランスのアナール派が一世を風靡する直前の状況がよくわかる比率となっています。近代歴史学の中心はドイツ→フランス→米国の順でヘゲモニーが移転してきており、最近では「ドイツが先行していたのは19世紀まで、20世紀はアナール派の世紀」、という気もしてしまう感じがありますが、1980年代中盤では、まだ日本ではアナール派はそんなに一般的ではなかった(少なくとも学部レベルでは)、という状況を知る歴史書として、一方で、史学科出身の中年の読者には当時の史学観を回顧する書籍として有用なのではないかと思う次第です。史学方法論の研究は、よく「体育をしない体育教師」などに例えられ、史学方法論史は思想史に入るようです。一方、本書でほとんど扱われていないイタリアやロシア、スペイン、ギリシア、或いはイラン、インド、南米等世界各国の史学方法論の現状や各国史学方法論史研究となると、社会学に入るのかも知れません。独仏米英日以外では、調査に値するほど方法論に関する議論の厚みがないのかも知れません。中堅諸国は中核国に留学して方法論を受容しているだけかも知れませんし、国家や宗教勢力や民族紛争の強い地域では、強力なイデオロギーのアクターが、今や重層化した多様な方法論の研究を妨げ、方法論の議論以前の段階なのかも知れません。研究史は、研究対象(古代ローマ史とかヴィクトリア朝とか、論争史とか)について記述されるものが一般的で、主要国以外については、その国の歴史学研究体制史や方法論史に絞った研究史叙述は、あまりないような気もします(日本における当該対象の研究史はわりと見つかる)。各国の歴史研究方法論史は、一般にはまだあまり情報が出回っていない分野であり、外国史研究者であれば既存の情報で記述できるはずですし、諸国のものを合わせると、グローバルな何かが見えてくるかも知れませんので、もっと発表されてもよいのではないかと思います。
de ゲオルク G.イッガース
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